労働基準法 第39条第9項
同じ1日なのに、金額が3通りあります
有給を1日使うと、その日の賃金が払われます。これは条文上の義務です。 ただしいくら払うかの決め方が3通りあり、 どれになるかは就業規則で決まっています。 自分で選ぶことも、上司が決めることもできません。 同じ月給30万円の人でも、方式が違うだけで1日あたり5,218円ずれます。
条文(原文のまま)
2026-09-06 取得。長いですが、3方式が全部この一文に入っています。
使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。 ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。
切れ目はここです。「就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより」のあとに、平均賃金/所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金/これらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額が並びます。 そしてただし書で、労使協定を結んだ場合にかぎり健康保険法第40条第1項の標準報酬月額の30分の1が使えるようになります。
同じ人を3方式で計算する
月給 300,000円 / 1か月の所定労働日数 20日 / 直前3か月の賃金総額 900,000円(総日数 92日)/ 標準報酬月額 300,000円 の人の場合。
| 方式 | 計算式 | 1日あたり | 使える条件 |
|---|---|---|---|
| 平均賃金 | 900,000 ÷ 92日 | 9,782 円 | 就業規則でこの方式を定めている場合 |
| 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金 | 300,000 ÷ 20日 | 15,000 円 | 就業規則でこの方式を定めている場合(いちばん多い) |
| 標準報酬月額の30分の1 | 300,000 ÷ 30 | 10,000 円 | 労使協定でこの方式を定めた場合にかぎる |
平均賃金がいちばん低く出るのは、分母が労働日数ではなく暦の日数だからです。 月給制の人にとっては、休みの日も分母に入ってくるぶんだけ1日あたりの単価が下がります。 「有給を使うと損をする気がする」という感覚は、この方式の会社では実際に起きています。
平均賃金には下限があります(第12条第1項)
日給制・時間給制・出来高払制の人には、条文が最低保障を置いています。
この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。 ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。 一 賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十 二 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額
本文は「3か月の賃金総額 ÷ その期間の総日数」ですが、ただし書が「次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない」と続き、 第1号が「賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十」です。 出勤日数が少ない働き方だと、本文の額が実態より低く出てしまうためです。
| どちら | 計算式 | 金額 |
|---|---|---|
| 本文 | 600,000 ÷ 92日 | 6,521 円 |
| 最低保障(第1号) | 600,000 ÷ 40日 × 60/100 | 9,000 円 |
| 採用される額 | 高いほう | 9,000 円 |
端数の切り方も条文に書いてあります
標準報酬月額を30で割ると、たいてい割り切れません。その端数の扱いは第39条第9項ただし書に そのまま書かれています——「五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、 これを十円に切り上げる」。10円に対する端数の話です。
| 標準報酬月額 | 30分の1(そのまま) | 条文の処理後 |
|---|---|---|
| 300,000 円 | 10000.00 円 | 10,000 円 |
| 260,000 円 | 8666.67 円 | 8,670 円 |
| 220,000 円 | 7333.33 円 | 7,330 円 |
| 301,650 円 | 10055.00 円 | 10,060 円 |
| 301,649 円 | 10054.97 円 | 10,050 円 |
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この表の金額はすべて有給を使った場合のものです。 買い取ってもらう場合の金額の決め方は労働基準法に定めが無く、当サイトでは扱いません。 原文は e-Gov法令検索の労働基準法(2026-09-06 取得)でご確認ください。